アリゾナ州ツーソンにあるピマ航空宇宙博物館(PIMA AIR & SPACE MUSEUM)は世界最大規模の航空博物館であり、歴史上貴重な航空機が多数展示されています。日本を爆撃したB-29や、ANAの塗装が施されたB787の試験機も展示されています。
今回は、ピマ航空宇宙博物館を見学してきたので、どのような航空博物館かご紹介します。
ピマ航空宇宙博物館の基本情報
アクセス
ピマ航空宇宙博物館はアメリカのアリゾナ州ツーソンにあります。日本からの直行便はありませんので、北米で乗り継ぐ必要があります。
ロサンゼルスからだと、約1.5時間のフライトです。日本からなら、ロサンゼルス経由が便数も多く便利だと思います。
私はFOPを稼ぐため、行きはダラス経由の遠回りルートを選びましたが。
ツーソン国際空港からは、車で10〜15分程度の距離です。ダウンタウンからでも15〜20分程度です。
ピマ航空宇宙博物館までの公共交通機関はありません。観光客ならタクシーやUberなど、配車を利用した方が便利だと思います。私はUberを利用しました。
営業時間と休館日
営業時間と休館日はこちら。
- 営業時間:9:00〜17:00(最終入場15:00まで)
- 休館日:Thanksgiving と Christmas day
オフィシャルサイトには上記のように記載されていますが、最新の情報はオフィシャルサイトでチェック。
ツーソンの気候
ツーソンは砂漠地帯にある都市です。夏場となる6月頭から9月末は恐ろしく暑く、日中は35℃を超えます。
ピマ航空宇宙博物館の展示の多くは屋外にあるので、夏場に行くときは熱中症対策とそれなりの覚悟が必要ですね。
私は3月中旬に行きました。日中は半袖ポロシャツでちょうど良く、歩き回っても汗をかくことはありませんでした。
朝晩は冷え込むので、羽織る長袖が必要でした。
暑さや体力に自信が無い場合は、見学ツアーも利用できます。屋根付きカートで屋外の展示エリアを回ってくれます。英語ですが解説もあり。
上の写真から何となく想像がつきますが、利用しているのはアメリカ人のシニア層がほとんです。しかもおデブちゃん。逆に暑苦しそうです。
また、ちゃんと間近で見学したければ、自分の足で回るしかありません。
博物館のマップ
チケットを購入すると、以下のような博物館内のマップをもらえます。
ハンガー(格納庫)内のマップでは、展示されている航空機が、ほぼ記載されています。見学時間が限られている場合は、見たい航空機をピンポイントで探さないと、タイムロスになります。
屋外展示エリアは、航空機の分類ごとに展示されています。
見学に必要な所要時間
見学に必要な所要時間は、マニア度によります!
簡単に見ながら展示エリアを1周するだけなら、2時間くらいだと思います。
機体を入念に見て回ると1日コースになると思います。本気で全制覇するには2-3日程度は必要ではないでしょうか。
私は約5時間見学してました。本当はもっと見たかったのですが、ツーソンの街にも行きたく。。。航空ファン失格です。
ピマ航空宇宙博物館の航空機を紹介
前置きが長くなりましたが、ここからはピマ航空宇宙博物館の展示を紹介します。
全部見学してやる意気込みでピマ航空宇宙博物館に行きましたが、展示機が多いのと、知らない機体も多いので、早々に全部見学するのは諦めました。
軍用機と民間旅客機の比率は、感覚的に9:1くらいでした。私は民間旅客機の方が好きなので、ほとんどが知らない航空機でした。
展示エリアを歩いていると、歴史上貴重な航空機から、イビツなスタイル航空機などが目に止まります。基準はありませんが、気になった機体を見学したので、その中でもいくつかご紹介します。
Aero Spacelines 377-SG Super Guppy
屋外の展示エリアで一番モッコリしたした機体で、目に止まりました。
Boeing C-97 Stratofreighterをベースに、Aero Spacelineが改造した大型輸送機。
大型ロケットエンジンや旅客機の主翼や胴体など、大型貨物を輸送するために開発された機体みたいです。開発当時は世界最大の容積を持つ航空機だったそうです。
当時は、エアバスの部品もSUPER GUPPYが輸送していたそうですが、「ライバルのボーイング機に輸送してもらうのはどうなん」という訳で、後にエアバスのベルーガが開発されたらしいです。
Convair B-36J Peacemaker
さて、どんどんいきますよー。
次はB-36J Peacemaker!個人的には、この機体がインパクトがありました。
通常は主翼の前方に付いているプロペラが、主翼の後方に付いています。しかも片側で3発も!
さらに良く見ると、一番外側には片側2発のターボジェットエンジンも付いてます。
元々は合計6発のレシプロだけだったそうですが、推力不足のため、当時としては最新技術のターボジェットエンジンを4発追加したそうです。
合計10発のエンジンを搭載する大型爆撃ですね。
Boeing 777-200
B777の1号機です。キャセイから退役してピマに寄付されたのは2018年9月。まだ展示エリアには置かれていなくて、立ち入り禁止のエリアに置かれていました。
まだまだ現役のB777-200ですが、早いもので初期の機体は引退が進んでいるみたいです。
ANAのB777-200の1号機(JA701A 1997年6月登録)も2018年1月に引退しています。
Boeing 787 飛行試験2号機 ZA002
さぁ、お待ちかね!私が一番見たかったB787のの飛行試験2号機(ZA002)です!
ローンチカスタマーであるANAの塗装が施されています。2009年~2011年の飛行試験を終えた後、ピマ航空宇宙博物館に寄贈されたそうです。日本にも一度飛来したことがあるそうです。
ピマに寄付されたのは2015年。私が訪れている時点で4年が経過していますが、思ったより砂埃を被っていなくて綺麗な感じ。砂漠地帯の乾燥した気候のため、飛行機の保管には適しているそうです。
見ての通り、見学者を阻止する極悪非道な囲いはありません。近づいて見たい放題です。こんなに間近で見れるなんて・・・感激です。
R1ドアの左側には、試験機を示すEXPERIMENALの記載があります。レジはN787EXですね。
運用中のANAのB787と比べると、何となくシンプルでスッキリした感じのカラーリングに見えますね。
若干ですが、斜めのブルーのラインが下がってますね。通常のANAのB787-8は、L2ドアにブルーのラインが重なります。また、日の丸やInspiration of JAPANの塗装もありませんね。
そのあたりの違いが、スッキリとした印象を与えていそうです。
ノーズギアの部分には、試験2号機を表す002の記載。
機体は屋外に放置されており、囲いなどはありません。常識の範囲でボディーにタッチできます。 一般ピーポーがボディーにタッチできるB787は、世界中でピマ航空宇宙博物館くらいではないでしょうか。
ノーズギアには、何やら操作ボタンが付いていました。
機体の真下に潜るとこんな感じ。身長170cmの私が直立できる高さです。
右側の写真はB787のアンチコリジョンライト(衝突防止灯、マニアはアンコリと略す)
B787はLEDが利用されています。夜間でもはっきりと点滅が見えるアンコリですが、思ったよりも小さいです。
エンジンはRolls Royce製のTrent1000です。騒音を低減するシェブロンノズル。このギザギザももう見慣れた感がありますね。
さすがに、エンジンの中に入るのはNGみたいです。
ANAのトリトンブルーのカラーリングには、Rolls Royceの青いロゴがマッチしますね。
こちらはメインギヤ。機体後方の車輪ですね。ディスクブレーキの構造も見ることができちゃいます。
正面から撮影すると、背景には中国南方航空のB737、右エンジン前には戦闘機の尾翼が写り込んでしまい、いい感じに正面から撮影できません。
マジで撤去してほしいわ(イラネ)
Boeing VC-137B
B707を軍用輸送機に改修した機体がC-137 Stratolinerです。さらに、アメリカの要人輸送機として改造された機体は、頭にVが付く、VC-137シリーズです。
ここまでは、情弱なにわか航空ファンの自分でも知っています。
ここから先は、ググって知りました。
カラーリングからアメリカ大統領専用機のように見えますが、VC-137Bは大統領専用機ではありません。大統領専用機はVC-137Cです。
このカラーリングは要人輸送などの重要ミッションで利用される輸送機に施されるカラーリングみたいです。
このカラーリングといい、メタリックなエンジンといい、とっても美しい機体です。
自分なんかはANA塗装のB787-8をじっくり見てましたが、アメリカ人はVC-137Bをじっくり見ている人が多い印象でした。逆にANA塗装のB787-8なんて、シカトされてる感じすらありましたよ。
Boeing B-52D / B-52G Stratofortress
B-52は8発のターボジェットエンジンを搭載した超巨大爆撃機です。ピマ航空宇宙博物には3機のB-52シリーズが展示されているそうです。ただ、3機のうちの1機は展示エリアでは見つけることができませんでし。。。
B-52Dは偵察機能を削除して長距離爆撃機に特化したモデル。
B-52Gは低空長距離侵攻能力を強化したモデル。角度的にわかりにくいですが、B-52Dよりも、垂直尾翼の上部がカットされてます。
1955年の運用開始から半世紀以上たった2019年時点でも、今だに現役とは驚きです。計画だと、改修しつつ2045年までするそうです。
燃料や爆弾を積んでいないためか、翼端についているギヤは宙に浮いています。
フロントのメインギヤは狭い間隔で取り付けられています。とっても不安定な感じがしますね。
Boeing B-29 Superfortress
第二次世界大戦で活躍、というか日本を敗戦に追い込んだB-29です。
こちらの機体は、終戦間近の1945年4月~8月で47回のミッションのうち、26回のミッションで日本を爆撃しています。正真正銘、日本を敗戦に追い込んだ機体の1機です。
愛称はSENTIMENTAL JOURNEY(センチメンタル・ジャーニー)です。日本の唄にもなっていますね。
って、唄は全く関係ありません。
弾薬庫の中も見れます。ここに爆弾を満載にすれば、日本は火の海ですね。
中島 キ115 剣
太平洋戦争末期に大日本帝国陸軍が開発した特攻隊兵器。
見た目はボロい感じです。ジュラルミン不足のため、銅と木材で作られてるみたい。実戦投入はされなかったそうです。
B-29の主翼の下に収まってしまいます。片道の特攻兵器のため余計なものが省かれているのかもしれませんが、B-29とはスケールが全然違います。
また、B-29と並べて展示するあたり、暗にアメリカと日本の格の違いを誇示しているようにも取れます。
Boeing B-17 Flying Fortress
ピマ航空宇宙博物館で一番大切に保管されている印象なのが、こちらのB-17 Flying Fortressです。B-17のためだけに、1つのハンガーが建設されてます。
B-17はヨーロッパ戦線で活躍した爆撃機だそうです。
展示エリアの壁には、機内の様子のイラストが描かれています。
Grumman F-14A Tomcat
TOMCATですね。映画『トップガン』でトム・クルーズが操縦していたのと同じ機種です。
2019年でもまだまだ現役で活躍出来そうな、洗練された見た目だと個人的には思いますが、アメリカ海軍からは2006年に完全退役してます。
Thunderbirds
アメリカ空軍のアクロバット飛行チームであるサンダーバーズの機体です。
F-4は機体が大きく重量級のため、アクロバット飛行には不向きだったとのこと。
白いカラーリングが、オジロファントムに似ている気がしました。
Blue Angels
こちらは、アメリカ海軍のアクロバット飛行チームであるブルーエンジェルスの機体です。ベースになっているのはGrumman F-11A Tigerです。
外の展示エリアには、F/A18ホーネットが展示してありました。
お土産コーナー
展示ルートの最後には、お約束のお土産コーナーがあります。
ピマ航空宇宙博物館のお土産コーナーは残念な感じでした。
ボーイングのコーナー。ボーイングの本拠地はシアトルなので、ボーイングに縁がある場所では無いと思いますが。
フライトタグは、まさかの両面にREMOVE BEFORE FLGHTの刺繍。片面はPIMAの刺繍にしてくれれば買ったんですが・・・
これでは触手が動かない。
ピマ感があるのはポロシャツやキャップなど、あとはボトルくらいですかね。この他はピマ感が全然無い、残念な感じでした。
私は何も買いませんでした。
ピマ航空宇宙博物館の感想
貴重な航空機を間近で見れたため、満足度はかなり高かったです。約5時間も見学してましたが、もっと見学したかった。
展示の多くは戦闘機や爆撃機であり、要は殺戮兵器です。戦争とは言え、実際に多くの生命を奪っています。そのような航空機を見て楽しむのは、若干不謹慎な気持ちにもなりました。あらためて、自分が生きている日本や時代をありがたく思いました。
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