シアトルは航空機メーカーであるボーイング社の創業の地であり、2001年にシカゴに本社を移転するまでは、シアトルに本社がありました。
そのため、シアトルは航空産業が発展し,現在もシアトル郊外のエバレットにはボーイング社の工場があります。まさにシアトルは航空産業の原点、航空機ファンにとっては人生で一度は訪れるべき聖地です。
私も聖地を巡礼するためシアトルにやってきました。今回はシアトル航空博物館(Museum of Flight)を見学してきましたのでご紹介します。
シアトル航空博物館の基本情報
アクセス
シアトル航空博物館(The Museum of Flight)は、シアトル・タコマ国際空港とシアトルダウンの中間くらいの場所にあります。キング郡国際空港(通称、ボーイングフィールド)に隣接しています。
シアトル航空博物館の前にはバス停があります。124番の路線バスで、「East Marginal Way S & S 96th Pl」のバス停で下車。
バス停のすぐ目の前が、シアトル航空博物館です。
建物の脇には、ブルーエンジェルス仕様のF/A-18のモックアップあります。ここから駐車場の方へ向かって歩きます。
駐車場の方へ向かって歩いていくと、メインエントランスの案内があります。
メインエントランスの正面には、ロッキード社製のL-1049 スーパー・コンステレーションがお出迎え。エア・カナダの前身、トランス・カナダ航空のL-1049です。
こちらがメインエントランス。中に入り、入場料を支払います。
入場料と営業時間
シアトル航空博物館の入場料はこちら。
- 4歳以下:無料
- 5~17歳:17ドル
- 18歳以上:25ドル
- 65歳以上:21ドル
- ミュージアムメンバー:無料
入場料や営業時間は、公式サイトで最新の情報をご確認ください。
公式 https://www.museumofflight.org/
見学に必要な時間
第一次世界大戦から現代まで、幅広い航空機が展示されています。最低でも3時間は見学時間を確保したいところ。飛行機好きなら、1日居ても物足りないと思います。
なお、私は約6時間滞在していました。
Great Galleryの多種多様な航空機
Great Galleryには、様々な時代の多種多様な航空機が展示されてます。半分くらいの機体は、天井から吊るされてます。展示されている機体が多く、全てをご紹介しきれないので、ごく一部だけご紹介していきます。
Boeing Model 80A-1
1965年に、アラスカ州アンカレッジのガラクタの中から発見された機体です。ボランティアの方々が何年もかけて、展示できる状態まで復元したそうです。現存する唯一のModel 80シリーズです。
Museum of Flightは、もともとはこのBoeing Model 80A-1の復元と保存をするというプロジェクトからスタートしたそうです。
機体にはUNITED AIR LINESのマークが。もともとユナイテッド航空は、ボーイングの創始者によって設立された会社ですね。
Boeing Model 40B Reproduction
Lockheed M-21 Blackbird
Great Galleryの中央に展示されているのは、世界最速の偵察機、Lockheed M-21 Blackbird。マッハ3以上のスピードを叩き出した機体です。Museum of Flightの機体は1963年に製造された機体ですが、50年以上もたった2018年時点でも、世界最速の機体として君臨しています。
Boeing 737-200
情弱なので定かではありませんが、たぶんクラシックなBoeing 737-200だと思います。後部がぶった切られていますが、中に入れます。
内部は2-2列の仕様になっていました。当時このシートで飛行していたかどうかは定かではありませんが、超ゆったり仕様のB737です。
コックピットも覗くことができます。計器だらけなコックピットで覚えるのも大変そうです。
コンコルドやエアフォースワンに入れる!Aviation Pavilionの展示
Aviation Pavilionには、大小様々な飛行機が20機も展示されています。全てをご紹介すると結構な量になるため、一部ご紹介していきます。
Boeing B-17F Flying Fortress
第二次世界大戦時に、ヨーロッパ戦線で活躍した爆撃機。
愛称は、Flying Fortress(空飛ぶ要塞)です。航空博物館に展示されている機体は、世界で唯一飛行可能なB-17Fだそうです。
Boeing B-29 Superfortress
こちらは第二次世界大戦の太平洋戦線で活躍した爆撃機。
愛称は、Superfortress(超空の要塞)です。
長距離爆撃機で日本本土を空襲した機体であり、日本人としては微妙な心境。私の祖母なんかは、B-29という名前すら聴きたくないレベルでした。
ちなみに、この機体はアメリカ空軍博物館からMuseum of Flightに貸し出されている機体です。
Concorde
来ました、コンコルド!
イギリスとフランスで共同開発した超音速旅客機で。1966年から1979年にかけて、20機のコンコルドが製造されました。商業的な失敗もあり、2003年には全機退役済みです。
航空博物館に展示されているコンコルドはG-BOAG、1978年4月に初飛行して、1980年にブリティッシュエアウェイズに引き渡された機体です。
20機しか製造されなかった希少価値の高いコンコルド、機内に入る事が可能です。なんとも太っ腹。
シートは樹脂製パネルでカバーされているため、座ったり触ることはできません。
カバーがあるにしても、機内は狭いです。
これでファーストクラスの120%の運賃だったそうです。庶民の私には手が出せません。まさにタイム・イズ・マネーの世界。
コックピットも覗くことができます。時代を感じるコックピットですね。こんなんで超音速飛行していたなんて、想像すると怖いです。それと同時に、全ての計器を意識してるパイロットはすごいと思いました。
機体後部はパネルで仕切られて入ることができません。
エンジンは、Rolls-Royce SNECMA Olympus 593 Mk 610を4発搭載しています。アフターバーナー付きターボジェットエンジンで、巡航速度はマッハ2に達します。
ターボジェットエンジンの戦闘機並みの騒音とソニックブームの影響で、超音速飛行が許可されていたのは海上だけだったそうです。
Boeing VC-137B “Air Force One”
さらに感激は続きます。次はエアフォースワン!
1959年に運用を開始したアメリカ初の大統領専用機です。ベースとなっている機体はBoeing 707-120です。
有名な話ですが、アメリカ大統領が空軍機に搭乗するときに利用するコールサインが、”Air Force One(エア・フォース・ワン)”となります。
機密情報満載のイメージが強い大統領専用機ですが、機内に入ることが可能です。
オー・マイ・ゴッド級の感激です。
機体後方から潜入して、最初に目に入ったのがこちらのトイレです。写真からはまさかのツイン便座に見えますが、ちゃんと個室は分かれてますよ。
コーヒーサーバーもあります。
秘書用のスペース。
CREW COMPARTMENTと記載がありましたが、どんな人が座っていたかはわかりませんでした。感覚的に、プレエコと同じくらいのシートピットとシート幅ですかね。
COMMUNICATION STATION、通信用の設備が集中しています。
コックピットはアナログ感がすごいですね。
Boeing 787 Dreamliner ZA003
Boeing 787の試験飛行3号機(機体番号:ZA003)も展示されてます。
この3号機は試験飛行に加え、Dream Tourと呼ばれるB787のプロモーションとして、世界を飛び回った機体でもあります。
B787はバリバリの現役機、私もよく乗るので見慣れた感じの機内です。
コックピットは、エアフォースワンやコンコルドと比較すると、デジタル感がありますね。なんだか安心します。
エコノミークラスは詰め込み仕様の3-3-3列のレイアウトです。標準仕様は2-4-2だと思いますが。。。
プロモーションとして、3-3-3で詰め込めることをアピールしていたのでしょうかね。
機体後方には座席が無く、ガラーンとしたスペースになっています。
ギアも間近で見ることができます。
エンジンは、Rolls-Royce Trent 1000です。
なお、試験飛行1号機は、セントレアのFLIGHT OF DREAMSに展示されています。FLIGHT OF DREAMSにトーイングしたときの様子はこちら。
試験飛行2号機は、アリゾナ州ツーソンにあるピマ航空宇宙博物館に展示されています。
Boeing 747 Prototype
日本人が大好きなB747のプロトタイプも展示されています。
初飛行は1969年2月9日で、B747の開発時だけではなく、B747のシステム改良やB777のエンジン開発などにも利用されていたそうです。
ラストフライトは1996年のMuseum of Flightまでの飛行で、思ったより最近でした。
機体番号はRA001、最初に製造されたB747のプロトタイプです。
機内には測定器などの試験用機器が展示されています。
時代を感じさせる機器ばかりです。
こちらウォータータンク。タンクの中の水を移動させることで、テスト飛行中に乗客や荷物の重量分散をシミュレーションできます。
エコノミークラスの座席でしょうか。
見学に夢中になりすぎで、正面からの全体写真を撮り忘れました。
あと、飛行機が密集し過ぎているので、広角レンズがないと、飛行機全体を写真に収めるのは難しいです。
Boeing 727 Prototype
展示されているB727は、最初に製造されたプロトタイプです。メジャーな旅客機ですが、世代的に私はB727には乗ったことがありません。初めて内部に潜入します。
機体番号はN7001U。ボーイング唯一の3発ジェットエンジンで、リアにJT8D-1ターボファンエンジンが3発搭載されています。
B727のテストフライトが完了した後は、ユナイテッド航空に引き渡されて、定期運行便として活躍した機体です。そのため、ユナイテッド航空の塗装が施されています。
エコノミークラスの座席は3-3列のレイアウト。B737と同じ仕様ですが、B737よりも若干広く感じます。
なお、パネルで仕切られているため、機体後方には行けません。
2018年時点でも、一部の航空会社で運用しています。前日のエバレット工場(ペインフィールド空港)でも、カリッタのB727がいました。
Boeing 737 Prototype
B737のPrototype。愛称はBaby Boeingで、ボーイングの中ではB737は最も小型なファミリー。
小型機のB737は、B787の主翼に下に収まってしまいそうな感じ。
飛行試験機として使用した後は、1974年にNASAの輸送システム研究用機体になりました。
こちらのB737は、内部には入ることができません。
ここまで気になった機体をご紹介しましたが、Aviation Pavilionにはまだまだ多くの展示があり、紹介しきる前に私の気力が尽きました(汗)
第一次と第二次世界大戦の貴重な戦闘機が見れるPersonal Courage Wing
Personal Courage Wingでは、第一次世界大戦(WWⅠ)と第二次世界大戦(WWⅡ)で活躍した戦闘機の数々が展示されてます。
1階がWWⅡのコーナーで、2階がWWⅠのコーナーになっています。こちらは階段から見たWWⅡのコーナーの全体です。
第二次世界大戦
現代旅客機の乗りヒコの私にとって、軍用機、しかも世界大戦の頃となるとさすがに知らない機体がほとんどです。第二次世界大戦であれば、かろうじてメジャーな機体なら名前を聞いたことがあるレベル。
とりあえず、目にの止まった機体をご紹介していきます。
中島一式戦闘機 隼 キ43-III甲
ゼロ戦ではなくて隼。第二次世界大戦時の大日本帝国陸軍の戦闘機ですね。アメリカだけでなく、世界中の戦闘機がコレクションされている、なんとも贅沢な博物館です。
Curtiss P-40N Warhawk
アメリカ陸軍の戦闘機。この写真からは見にくいですが、機体には「O’RILEY’S DAUGHTER (奥瑞利之女)」との記載が。情弱かつ英語力が無いため、説明を読んでも、この表記がされているか理由が理解できませんでした。
General Motors FM-2 Wildcat
アメリカ海軍の艦上戦闘機、ワイルドキャット。速度と運動性能でゼロ戦を上回っていたとか。
North American P-51D Mustang
こちらはノースアメリカン社製のP-51 マスタング。金属剥き出しのベアメタルな機体が美しいですね。
第一次世界大戦
二階に上がって、ここからは第一次世界大戦のコーナーです。WWIの展示になると、マニアックすぎて私には全くわかりません。とりあえず、写真メインで載せておきます。
Caproni Ca.20
世界初の戦闘機と言われている、Caproni Ca.20です。1914年にイタリアの Giovanni Battista Caproniにより一機だけ製造された試作機です。
この戦闘機だけはチェックしないといけません。なんでも、シアトル航空博物館の中で、もっとも貴重な機体であるとか。
巨大なプロペラスピナーが印象的。
初見の感想は、はっきり言ってボロいです。こんな機体で本当に飛べるのかと思ってしまいました。
Albatros D.Va (L24) Reproduction
Nieuport 24bis Reproduction
Curtiss JN-4D Jenny Reproduction
WWⅡの後にWWⅠの戦闘機を見ると、やっぱり世代を感じます。WWⅡの方が機体サイズも大きく、重装備になっている感じがありました。
ボーイングの原点「Red Barn」
ボーイングの原点となる工場、その名もレッドバーンもあります。ボーイング発祥の地ならではの展示ですね。
木造の建物で、設計室や組み立て室など、当時を再現した展示を見ることができます。
飛行機が小型とはいえ、そんなに大きくない建物の中で製造をしていたというのですから驚きです。
先日、ボーイングのエバレット工場も見学してきましたが、現在のボーイング社の規模からは、考えられないほど小さな建物です。
航空ファンなら一日中楽しめる
私にとって、今回のシアトル巡礼の一番の目的はエバレット工場でり、シアトル航空博物館はおまけ程度に考えてました。
しかし、実際にはそんなことは全然無く、エバレット工場見学と同等かそれ以上の満足度でした。
6時間滞在しましたが、もっと見ていたかった。本当にもう一度行ってみたいです。
ただ、私のような軽い航空ファンの場合、ちゃんと予習をしておかないと、どれが貴重な展示なのか分からなかったです。ちゃんと予習をしてから見学した方が良いと思いました。
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